自律神経失調症 は誰にも起きる
苦手な上司のいる部署に異動してから下痢ばかりだったり……。
この心と体の不思議な関係を解き明かすカギの一つが、自律神経にある。
全身に張りめぐらされた自律神経をコントロールしている中枢は、脳の間脳という場所にある視床下部だ。
視床下部は、自律神経(交感神経・副交感神経)、ホルモン、免疫系などを介して内臓の働きをコントロールしている。
この視床下部のすぐ上にあるのが大脳辺縁系。
「情動脳」ともいわれ、不安、恐怖、怒りなどの感情や、本能的欲求を生じる場所だ。
そして、脳が不安やストレスを感じると、大脳辺縁系を介して視床下部に影響が及ぶ。
例えば、非常に強い不安や緊張を感じると、その『緊張信号』が視床下部に伝わって交感神経に指令を出す。
すると動悸(どうき)や発汗などが起きる。
問題は、この視床下部の調節に不調をもたらすことがあること。
ストレスが慢性的に続いたりすると、緊張信号が出っぱなしになって視床下部に負担がかかる。
次第に視床下部の働きに混乱が生じ、交感神経と副交感神経の切り替えもうまくいかなくなる。
その結果、暑くもないのに汗が出たり、動悸がしたりという自律神経失調症状をもたらすことに。
この程度の症状なら、人前で緊張したときなど誰でも経験するが、もし、長く続くようなら自律神経失調症という病気が疑われるでしょう。
「自律神経失調症」の原因は5つのタイプに分けられる
自律神経は全身に張りめぐらされ、体のさまざまな機能をコントロールしている。
一度バランスが崩れると、さまざまな不調が現れる
自律神経失調症は、発症原因もさまざまだ。
原因として5つのタイプを挙げられます。
もともと自律神経に機能異常をもたらしやすい体質や性格素因がある一方、生活習慣の乱れが関与する場合や、精神的ストレスがもたらす「緊張信号」が高まって発症する場合もある。
これら複数の原因が重なることもある。
自律神経失調症の治療は
まずは患者さんが訴える症状をもたらす別の病気がないかどうかを確かめる
原因となる病気がないとわかれば、心理療法や薬物療法を行う。
例えば、不安が強く「緊張信号」が過度に出ている場合には、患者の話を傾聴し気持ちを楽にする一般心理療法を行う。
また、自律神経の機能異常を改善する働きのある、抗うつ薬や抗不安薬などを用いる。
このほか、自律訓練法といったリラクゼーション法などを行う場合もあります。
重要なのは生活改善のアドバイスだという。
「同じ出来事でも、とらえ方次第でそれがストレスになったりならなかったりする」
考え方をチェンジする方法を学べば、つらさを軽減できるというわけだ。
自律神経失調症を原因で分類した5タイプ
① 体質が原因
もともと体質的に自律神経機能のバランスの悪い人がいる。急に立ち上がるとめまいがするといった、起立性低血圧の症状が見られる場合、このようなタイプの可能性が高い。
→軽い運動を習慣づけて自律神経機能をアップしよう
② 性格・素質が原因
神経質傾向が強い人は、完全主義的傾向が見られ、小さな事にもこだわる。体のちょっとした不調に対しても、重大な病気ではないかと心配して緊張信号が強く出る。
→考え方をチェンジして気持ちを楽にする
③ 生活リズムの乱れが原因
自律神経は約24時間の周期でバランスを保っている。
その周期の維持には睡眠、食事、運動などが関与しており、生活リズムが乱れると自律神経の中枢に過度の負担がかかる。
→毎日定時に起床し朝食をとるなど規則正しい生活を心がける
④ 身体的ストレスが原因
暑い、あるいは寒い環境で作業を続けると、体温調整のために緊張信号が過度に出続けるため、自律神経失調症が見られるようになる。
冷房の効きすぎにも要注意。
→衣服などで環境の変化にきめ細やかに対応する
⑤ 精神的ストレスが原因
不安や緊張、あるいは抑うつなどの「不快な気分」を生じるような場面が、日常生活で多く見られるような場合に、緊張信号が過度に出て、自律神経失調症となる。
→心療内科などで一般心理療法などを受けてみる
自律神経の乱れをセルフケアで整えよう
生活習慣を工夫することでも自律神経のバランスの乱れを整えることができる。
これは自分に合いそうだ、と思うものから試してみよう。
・仕事帰りに寄り道する
日常のストレス解消では、オンとオフの切り替えが重要。せっかく仕事を終えたのに気持ちがオフにならないときは「寄り道」がお薦め。カフェでコーヒーを味わったり、書店で新刊書を立ち読みしたりするだけでも、オフのスイッチになる。
・笑う、号泣する
笑いが自律神経にもたらす効果は、世界の研究で明らかにされている。おかしくて大笑いできればいいが、ニッコリ「つくり笑い」でも効果があるという。そして同様に効果があるのが泣くこと。泣くことで副交感神経が優位な状態に切り替わる。
・ウオーキングなどの運動をする
神経伝達物質のセロトニンには、副交感神経の働きを高めて自律神経のバランスをとる作用がある。
セロトニンを増やすのはリズミカルな運動で、ウオーキングがその代表だ。
それ以外の運動全般にも、終えたあとに副交感神経を高める効果がある。
・ぬるい風呂に入る
入浴には、いくつもの健康効果があるが、自律神経との関わりでいえば40℃の湯が1つの目安だ。このぬるめの湯が副交感神経を高めてリラックスさせてくれる。
30分の半身浴なら全身がしっかり温まる。入浴後は湯冷めしないうちに布団へ。
・コーヒーは控えめに
コーヒー、紅茶、緑茶に含まれるカフェインには、交感神経の活動を高める作用がある。
日中の気分転換にはいいが、自律神経失調症の人は日常的に交感神経が優位になっているので、あまり飲みすぎないように。
就寝前には飲まないほうがよい。
いつでもご相談くださいね。