挫傷(肉離れ)とは
一般に筋違いや肉離れとよばれる外傷で、正式名を筋挫傷(きんざしょう)といいます。 筋挫傷とは、筋肉や腱(筋肉を骨に付着させる組織)が打撃または無理に伸ばされることによって生ずる怪我です。
筋挫傷はこんな病気
挫傷とは鈍的な外力(打撲)により、皮下組織や筋肉、腱などに損傷が生じるものです。
そのうち筋肉に損傷を受けたものを筋挫傷と呼びます。さらにその外力が高度な場合には骨の損傷や骨折を合併することもあります。
筋挫傷はコンタクトスポーツ(相手との接触)で膝、肩、頭などがあたったり、靴で蹴られることで発生し、格闘技やサッカー、ラクビーなどでよく起こります。
主な症状は激しい痛みと腫れで、好発部位は大腿前面です。打撲した周囲がだんだん腫れてきて、皮膚が光沢を帯び、パンパンになってきます。腫れは翌日から数日で最大となり、その後徐々に軽減していきます。歩行障害や膝関節の屈曲制限が生じることも少なくありません。
筋挫傷の治療法
受傷機転(けがをした状況)と症状から診断は比較的容易です。受傷直後から48時間はRICE処置を徹底して行います。この際、膝の屈曲制限を予防するため膝屈曲位を保持することが望ましいです。
また、痛みに応じて湿布や鎮痛剤の内服を行います。
軽症の場合にはRICE処置により、数日で痛みや腫れは軽減します。しかし、重症の場合には数日経過しても膝の屈曲が90度以上曲がらないこともあります。そんなときは、痛みのない範囲で関節可動域を改善するリハビリテーションを行ってください。関節の動きが正常に戻ればスクワットや痛みのないスポーツ活動を開始し、復帰を目指しましょう。
RICE処置とは
安静(Rest); | 無理な活動の継続や体重負荷を避けて安静を保ち、新たな損傷を防止 |
冷却(Icing); | コールドスプレーや氷などを用いて冷却し、損傷部の出血や腫れを抑制 |
圧迫(Compression); | 包帯やスポンジで圧迫を加え、血腫の増大を予防 |
挙上(Elevation); | 患部を挙上し、静脈やリンパの流れを改善して腫れを抑制 |
合併症
筋挫傷には以下のような合併症を伴う場合があります。
1)コンパートメント症候群
損傷された筋肉内の出血や腫脹が高度となった場合、その筋肉の内圧が増大し、血行障害を起こします。その結果、筋肉の壊死、神経障害をきたして、重大な後遺障害が発生します。比較的まれな合併症ですが、我慢できない激しい痛み、皮膚の水疱を伴う高度の腫れ、知覚障害や運動麻痺などを認める場合、本症を疑い早急に適切な処置を行い、手術(筋膜切開)が必要となることもあります。2)異所性骨化・骨化性筋炎
筋肉内の血腫や骨膜損傷を伴う骨挫傷においては、数週間してから筋肉内や骨と筋肉の間に骨性の組織が形成され、難治性の関節可動域制限や痛みが出現することがあります。特に重症の筋挫傷後には適切な初期治療が必要であり、治療が遅れた場合に発症する危険性があります。
挫傷の応急処置
肉離れ(挫傷)の応急処置
ふとももの裏の筋肉(ハムストリングス)に肉離れが起きてしまった場合は、痛みが出ている箇所にアイシングを施し、そこに圧迫を加えます。
手のひらで圧迫してもよろしいですし、アイシングを止めるためのゴムバンドやラップなどでアイシングと同時に圧迫を加えても大丈夫です。
このとき、圧迫が強すぎると血流を完全に遮断してしまう恐れがありますので注意が必要です。
ここで、ポイントとなるのが応急処置をする際のケガをしてしまった方の姿勢です。
ハムストリングスを肉離れしている場合は膝を伸ばした姿勢で応急処置を施しましょう。
膝を伸ばした姿勢は、ハムストリングスに適度な緊張が生まれ、肉離れしてしまっている筋肉の傷口をふさぎ、止血効果を高めることができます。
他の筋肉でも同様に、その筋肉に少し緊張を持たせた状態で応急処置を行ってください。
挫傷の鍼灸治療
肉離れ
肉ばなれとは筋肉が引きのばされたことにより部分的に損傷された状態です。 太腿の裏の筋肉(ハムストリングス)やふくらはぎの筋肉(腓腹筋)によくみられます。
診断は、痛みの発生状況、押して痛い部分の陥凹の有無を触診で観察します。 疲労骨折の可能性もある場合はレントゲンを確認しますが、筋肉の状態の観察にはエコーが適しています。 エコーにより筋肉繊維の乱れ、出血を確認します。重症度が高い場合はMRI検査にて血腫の大きさ損傷部位を確認します。
歩くだけで痛い間は運動の中止が必要です。 通常は、肉離れした部位の筋肉をストッレチした時に痛みを感じなくなってからスポーツに復帰するのが望ましいと思われます。 再発予防には、筋肉の柔軟性獲得が必要なので、スポーツ休止時のコンディショニングを兼ねたストレッチ中心のリハビリが重要です。
筋挫傷 筋肉内血腫
筋挫傷とは筋肉に直接的な外力がかかったことによる損傷で、肉離れとは異なります。 典型例はスポーツ中に他者の膝が自分の太腿にぶつかり、以後同部の腫れや痛みで運動ができないといった状況です。
診断は、肉ばなれと同様に、理学所見エコー重症例ではMRIにより筋肉の損傷程度を確認します。 筋挫傷においても歩行時に痛みがある場合は、スポーツ休止が望ましいのですが、早期復帰のためには安静期間中もコンディショニングを兼ねたリハビリが重要です。
また大腿部、下腿部を運動中に強く蹴られたり、他者の膝が大腿部ぶつかったり(通称 ももかん)すると筋肉内に血種ができることがあります。 大きな血種は、吸収されにくく強い痛みも伴う。
挫傷時のストレッチ方法
肉離れの診断と治療
太もも前面(ハムストリング)と太ももの裏(大腿四頭筋)の肉離れ
筋肉をストレッチした時の痛み(ストレッチ痛)がでる角度で、重傷度がある程度わかります。
太ももの肉離れはMRI検査(磁気を使い、体の断面を写す検査)が有用です。MRI画像により肉離れの重傷度がわかります。重症度は軽症(Ⅰ型)、中等症(Ⅱ型)、重症(Ⅲ型)に分けられます。(奥脇透.臨床スポーツ.2010)
・ストレッチ痛がほとんど無く、力を入れるときだけ痛いのであればⅠ型(軽症)と判断します。テーピングやサポーターを使用し1〜2週でスポーツ復帰が可能となります。
・ストレッチ痛が明らかなものはⅡ型以上を疑いMRI検査を勧めます。
・中等度(Ⅱ型)は、腱膜の修復に時間を要するためスポーツ復帰には1〜3ヶ月かかります。Ⅱ型損傷なのにⅠ型損傷と診断され、早期にスポーツ復帰した場合には、約半数の症例で再断裂を認め、最終的に競技復帰が遅くなります。
・MRI画像で重度(Ⅲ型)が強く疑われた場合には手術療法の選択も検討する必要があります。スポーツ復帰には3〜6ヶ月かかる見込みです。
挫傷鍼灸治療
肉離れの主なツボ
大椎 | 発熱、かぜの症状、背中のこりなど。熱の気の調節を行うツボ。 |
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手三里 | 胃腸、上肢、目の症状、テニス肘。肩こり、寝違えを和らげる。鼻炎や蓄膿症などの鼻症状、皮膚症状、便秘の緩和。 |
合谷 | 顔の症状、目の症状、全身の気を調節するときも使用します。他に貧血を回復させる返し鍼に使われる。 |
肝兪 | 目の充血、眼精疲労、めまい、イライラ、飲み過ぎ。 |
脾兪 | 胃腸の症状、食欲不振、むくみ。 |
腎兪 | 腰足の重さ、腰痛、泌尿器の症状、むくみ、耳の症状、足の冷え。 |
三陰交 | 消化器のほか、女性疾患の特効穴。冷え少女、婦人科症状(月経不順、更年期障害など)を調節。 |
太谿 | のどの痛み、耳鳴り、不眠、腰背中の痛み、頭痛、めまい。腎の症状に対して有効。 |
崑崙 | 頭痛、首の痛み、肩背中の引きつれ、腰痛、足首の痛み、膀胱経の症状がでやすい。足の疲れやむくみ、下痢にも有用。 |
大衝 | 頭痛、めまい、吐き気、目の充血、婦人科の症状、排尿問題。血の滞りを改善するのに有効なツボ。生理痛にも特に有効。 |
労宮 | 胸の苦しさ。指圧でも効果がある。 |
血海 | 婦人科の症状、血の滞りを良くするツボ。 |
委中 | 腰足の痛み、ギックリ腰の時にも有効です。足のむくみ、背骨の際、頭部の痛みやこりにも有効。 |
承山 | 足の痛み、腰痛。 |