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春に多い不調と鍼灸での改善策:ちょっと長いけど読んでみてください

2025.03.12

春は暖かく過ごしやすい季節ですが、一方で体調を崩しやすい季節でもあります。

花粉症や季節の変わり目の風邪、黄砂・PM2.5によるアレルギー症状、自律神経の乱れ(いわゆる「春バテ」)、食中毒など、春に流行しやすい症状がいくつも存在します。
本記事では、春の季節に流行る主な症状について原因やメカニズムを詳しく解説し、それらに対する鍼灸治療のアプローチをご紹介します。

さらに、自宅でできるセルフケア方法も取り上げます。専門的な内容も含みますが、一般の方にもわかりやすい言葉で説明します。

科学的根拠に基づく鍼灸の有効性にも触れながら、春の不調改善に役立つ情報をお届けします。

1.春の季節に流行る症状とは

春は気温や環境の変化が大きく、体に様々なストレスがかかる時期です。その影響で以下のような症状が現れやすくなります。

それぞれの原因やメカニズムを見ていきましょう。

花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)

春と言えばスギやヒノキなどの花粉症に悩む方が非常に多くなります。
花粉症は、鼻や目の粘膜に侵入した花粉(アレルゲン)に対する免疫反応が過剰に起こることで、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみといった症状を引き起こすアレルギー疾患です。具体的なメカニズムとしては、花粉が鼻腔粘膜に付着すると体内でそれに対するIgE抗体が作られ、マスト細胞という免疫細胞に結合します。
再び同じ花粉が侵入すると、このマスト細胞からヒスタミンなどの化学物質が放出され、鼻水・くしゃみなどのアレルギー症状が起こります。スギ花粉は特に春先(2~4月頃)に大量飛散し、日本では患者数が年々増えています。症状がひどいと日常生活にも支障をきたすため、対策が欠かせません。

風邪・インフルエンザ

冬のイメージが強い風邪やインフルエンザですが、春先も注意が必要です。春は朝晩と日中の寒暖差が大きく、自律神経のバランスが乱れやすくなります。
その結果、体の防御機能(免疫力)が低下し、ウイルスが体内に侵入しやすくなって風邪をひきやすくなります。加えて、卒業や入学、就職など環境の変化による心理的ストレスも重なると、さらに免疫力が下がりがちです。風邪の原因となるウイルスは200種類以上あり、一年中活動するものもいます。

特に春や秋にはライノウイルス(鼻風邪の原因ウイルス)が多く流行し、春の風邪の主な原因とされています。インフルエンザも例年冬に流行しますが、
気候によっては春先まで散発的に感染が見られることがあります。症状としては、鼻や喉の炎症、咳、発熱、全身倦怠感などが挙げられ、特にインフルエンザでは高熱や関節痛が特徴的です。春は気温の変動で体調管理が難しい時期なので、冬と同様に手洗い・うがいなどの予防策を続けることが大切です。

黄砂・PM2.5による健康被害

春になると中国大陸から飛来する黄砂や、大気中の微小粒子状物質であるPM2.5の濃度が上昇しやすくなります。

これらがもたらす健康被害も春特有の問題です。黄砂やPM2.5そのものは花粉のような抗原ではありませんが、粒子が目や鼻の粘膜を直接刺激したり付着したりすることで、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、喉の痛みや咳、目のかゆみ・異物感、肌荒れなど花粉症に似た症状を引き起こすことがあります。
特に花粉症の方は、飛散する黄砂やPM2.5によってアレルギー症状がさらに悪化するケースも報告されています。
一方で「花粉症ではないのに花粉症のような症状」が出る場合、黄砂やPM2.5が原因の可能性があります。PM2.5は非常に粒子径が小さいため肺の奥深くまで入り込みやすく、ぜんそくや気管支炎など呼吸器疾患を悪化させたり、循環器系にも影響を及ぼすことが懸念されています。
黄砂も大量に飛ぶ日は視界不良を起こすほどで、それだけ大量の粒子を吸い込むリスクがあるということです。
命に関わるような重篤な症状(アナフィラキシーショックなど)はまれですが、症状が長引くと仕事や勉強の効率が落ちるなど生活の質(QOL)の低下に繋がります。春の外出時は黄砂・PM2.5対策も忘れずにしましょう。

自律神経の乱れ(春バテ)

春先に「なんとなくだるい」「疲れやすい」「朝起きづらい」といった不調を感じる人は少なくありません。

いわゆる「春バテ」とも呼ばれる状態で、急激な気温変化や生活環境の変化によって自律神経のバランスが乱れることで生じる心身の不調を指します。春は一年の中でも寒暖差が大きく、新生活のスタートなど環境変化も重なる季節です。
その変化に身体が対応しようとして交感神経が過剰に働き続けると、次第に自律神経が疲弊してバランスを崩しやすくなります。
その結果、疲労感や倦怠感、睡眠の質の低下、頭痛、めまい、消化不良、便秘・下痢、肩こり、イライラや気分の落ち込みなど様々な症状が現れます。
例えば「春眠暁を覚えず」という言葉の通り、春は十分寝ているはずなのに朝起きられない、日中も眠いといった傾向があります。また、新生活の緊張や不安で肩や首の筋肉がこわばり肩こりや頭痛になったり、自律神経の影響で胃腸の働きが乱れて食欲不振や下痢になったりすることもあります。
春バテの主な原因はこの自律神経の乱れにあり、寒暖差やストレスが引き金になります。放置すると長引く可能性があるため、早めのケアが大切です。

食中毒

食中毒というと梅雨〜夏のイメージですが、実は春も食中毒への注意が必要な季節です。気温が上がり始める春先は細菌が繁殖しやすくなり、5月頃から細菌性食中毒の件数が徐々に増えていきます。
特に初夏から夏場にかけてはカンピロバクター、サルモネラ、病原性大腸菌O157などによる細菌性食中毒が多発しますが、春の段階でも油断できません。また春は、冬から引き続きノロウイルスなどのウイルス性食中毒が発生したり、アニサキス(魚介類に寄生する寄生虫)による食中毒が年間で最も多く報告される時期でもあります。
さらに他の季節に比べて、山菜や毒キノコ、フグといった自然毒による食中毒も春(および秋)には多く発生します。実際、春の行楽シーズンにはニラと有毒植物のスイセンを誤食する例や、朝採った野草に実は毒があったという事故も報告されています。
症状は原因物質によって異なりますが、一般に腹痛、下痢、嘔吐、発熱などが起こり、重症化すると脱水症状に陥ることもあります。春は気温変化で注意がそれやすいですが、食品の扱いにも引き続き注意が必要です。

以上が春に流行りやすい主な症状とその概要です。それでは次に、これらの症状に対して鍼灸ではどのようなアプローチができるのかを見ていきましょう。

2. 鍼灸治療のアプローチ

東洋医学である鍼灸は、体全体のバランスを整え自己治癒力を高めることで様々な症状の改善を図る治療法です。細い鍼(はり)を体の特定の点(経穴=ツボ)に刺入したり、お灸で温めたりすることで、気血の巡りを良くし、神経・内分泌・免疫系に作用して症状を和らげます。

ここでは、鍼灸院での一般的な施術の流れと、前述した各症状に対する具体的なアプローチを紹介します。

鍼灸施術の流れ
	1.カウンセリング・問診:まず患者さんの症状や生活習慣、既往歴などを詳しく聞き取ります。春の不調の場合、いつ頃からどのような症状が出ているか、アレルギーの有無、ストレス状況などを確認します。
	2.脈診・舌診・触診:東洋医学的な診断として脈をみたり舌の状態を観察したり、お腹や経穴の反応を触診します。これにより、気血水のバランスや臓腑の状態、自律神経の緊張具合などを判断し、症状の根本原因を探ります。
	3.施術方針の説明:診察結果に基づき、どのような経絡・経穴にアプローチするか方針を立てます。患者さんにも「〇〇の症状には△△というツボを使って○○の効果を狙います」など、できるだけわかりやすく説明します。
	4.鍼灸施術:ベッドに横になってもらい、実際に鍼を打っていきます。鍼は髪の毛ほどの細さで痛みはほとんどなく、刺入後は10~20分ほどそのまま留めます(症状により異なる)必要に応じてお灸(温熱刺激)も併用します。リラックスして眠ってしまう方もいるほど心地よい刺激です。
	5.術後の確認とアドバイス:鍼をすべて抜き取り施術終了です。施術後の体調変化を確認し、日常で気をつけることや簡単なセルフケア(後述)も指導します。症状の程度にもよりますが、週1~2回のペースで数回続けて施術を受けると徐々に改善が実感できるでしょう。

では、各症状ごとに鍼灸で期待できる効果と代表的なツボについて詳しく見ていきます。

花粉症への鍼灸アプローチ

花粉症に対する鍼灸治療は、鼻粘膜の過敏状態を鎮め、免疫バランスを調整することを目的に行います。具体的には鼻周辺のツボや全身の免疫調整ポイントに鍼をします。
例えば、鼻づまりには鼻翼の横にある迎香(げいこう、LI20)や眉間の印堂(いんどう)といった局所のツボ、くしゃみや鼻水の緩和には手の合谷(ごうこく、LI4)や足の三里(あしのさんり、ST36)などがよく使われます。迎香は鼻の通りを良くし、合谷は全身の気の巡りを整えて鼻粘膜の炎症を抑える効果が期待できます。

科学的にも、鍼灸が花粉症症状に有効であることを示す研究が増えてきています。
あるメタ分析では、アレルギー性鼻炎患者2365人を対象に13の試験を解析した結果、鍼治療を受けたグループは対照群に比べて鼻症状スコアの有意な改善、抗アレルギー薬の使用量減少、血中IgE抗体値の低下がみられました。副作用などの重大な有害事象も報告されておらず、鍼灸はアレルギー性鼻炎に対して安全で有効な治療選択肢になり得ると結論づけています。このようにエビデンスも蓄積されつつあり、実際臨床でも「鍼をすると鼻の通りが良くなり、目のかゆみも軽減した」「薬だけに頼らず過ごせるようになった」という声が多く聞かれます。

東洋医学的には、花粉症は「風邪(ふうじゃ)」(外部から風と共に侵入する邪気)によって鼻や肺の経絡に炎症が起きている状態と考えられます。そのため、風邪を追い払い、肺の機能を高める経穴を組み合わせて施術します。先述の迎香・印堂・合谷・足三里に加え、肺経の尺沢(しゃくたく、LU5)や曲池(きょくち、LI11)、背中の肺兪(はいゆ、BL13)などを併用することもあります。症状が強い時期は週1–2回の施術で症状を抑え、オフシーズンに体質改善目的の施術を行うことで、翌年の発症を軽くすることも期待できます。

風邪・インフルエンザへの鍼灸アプローチ

風邪やインフルエンザの初期に鍼灸を受けると、症状の緩和や回復の早さに効果が期待できます。鍼灸には免疫機能を活性化する作用があり、体の防御反応を高めてくれるからです。例えば、風邪のひき始めで喉が痛い・寒気がするような時には、首の付け根にある大椎(だいつい、DU14)や風池(ふうち、GB20)といった外邪を追い出すツボにお灸を据えたり鍼をしたりします。また、鼻や喉の症状には先ほどと同じ合谷や列缺(れっけつ、LU7)を組み合わせ、発熱や頭痛がある場合は曲池や太衝(たいしょう、LR3)で熱を冷まし、全身の倦怠感には足三里で気力を補います。

西洋医学的な観点でも、鍼灸が免疫細胞を活性化し風邪症状を和らげることが示唆されています。ある研究では、鍼治療は市販薬よりも鼻水、喉の痛み、頭痛、鼻づまりなど風邪の諸症状に対する効果が高く、鍼を受けたグループの方が症状が軽減し回復も早まったと報告されています。さらに鍼刺激によってナチュラルキラー細胞(NK細胞)というウイルス感染細胞を攻撃する免疫細胞が増加することも明らかになりました。NK細胞はウイルスや腫瘍細胞を排除する重要な役割を担うため、鍼灸でその働きが高まることは風邪やインフルエンザの予防・早期撃退につながると考えられます。

東洋医学的には、風邪は「風邪(ふうじゃ)」や「寒邪」(寒さの邪気)が体表から侵入した状態であり、初期には汗をかかせて発散させることが有効とされます。鍼灸ではこれを促すために、肩甲間部の風門(ふうもん、BL12)や肺兪、先述の風池などにアプローチします。また、体力が落ちているときは腎兪(じんゆ、BL23)や関元(かんげん、CV4)でエネルギーを補い、回復を促します。インフルエンザのように高熱が出る場合でも、鍼灸を行うと体温調節がスムーズになり解熱を助けることがあります。もちろん高熱時は無理をせず安静が第一ですが、鍼灸は薬と併用して症状緩和に役立てることができます。

黄砂・PM2.5による症状への鍼灸アプローチ

黄砂やPM2.5によるアレルギー様症状や咳にも、鍼灸は有効です。これらの場合、呼吸器系の粘膜の炎症を抑え、気道を拡げて呼吸を楽にすることを目標に施術します。アレルギー症状が似ていることから花粉症のツボと重なる部分もありますが、特に咳や痰といった症状がある場合は肺の経絡に沿ったツボを多用します。具体的には、胸の中央にある膻中(だんちゅう、CV17)は気管支を広げる効果が期待でき、喉の違和感には天突(てんとつ、CV22)が喉の通りを良くします。背中の肺兪や膏肓(こうこう、BL43)は肺機能を高める要穴で、ゼーゼーする咳や息苦しさに用いられます。喘息持ちの方が黄砂で悪化したようなケースでは、これらの肺のツボと併せて気管支拡張作用のある定喘(ていぜん)という背中のポイントも使います。

鍼灸には気道の炎症を鎮め、神経の過敏反応を落ち着かせる作用もあります。慢性的な咳に対する研究では、鍼治療により咳反射の過敏性が低下し、気道の炎症マーカーが減少すると報告されています。また、気管支喘息患者に対する臨床研究では、鍼灸併用によりステロイド薬の副作用を軽減しつつ症状コントロールが改善したとの報告もあります。このように、鍼灸は気道の炎症や過敏状態を和らげ、呼吸機能を向上させる可能性が示唆されています。黄砂やPM2.5による症状も、喉のイガイガや咳込みが鍼灸後に楽になるケースが多く見られます。

東洋医学では、肺は皮毛を主り、外邪が侵入しやすい臓とされています。黄砂やPM2.5も一種の邪気としてとらえ、肺の経絡からそれを排除し、防衛気(衛気)を強めるアプローチを行います。先述の肺兪や膻中に加え、尺沢や孔最(こうさい、LU6)など肺経のツボ、鼻症状には迎香や上星(じょうせい、GV23)などを組み合わせます。症状が複合的な場合は、一人ひとりの状態に合わせてツボを選ぶオーダーメイドの施術となります。

自律神経の乱れ(春バテ)への鍼灸アプローチ

自律神経のバランスが乱れている春バテ症状には、鍼灸は本領を発揮します。なぜなら、鍼灸には自律神経の調整作用があり、交感神経と副交感神経のバランスを整えることで心身の不調を改善できるからです。施術では、リラックス効果の高いツボやホルモンバランスを整えるツボを選んで刺激します。例えば、ストレスや不眠には手首内側の神門(しんもん、HT7)や足の三陰交(さんいんこう、SP6)がよく使われます。神門は心を落ち着かせる安定作用があり、三陰交は自律神経やホルモン調整の要点です。また、全身倦怠感や食欲不振が強い場合は、おへそ下の関元(かんげん、CV4)や足三里で気力・胃腸機能を補います。頭重感やめまいには頭頂部の百会(ひゃくえ、GV20)が効果的で、スッキリと頭の巡りを良くしてくれます。これらのツボに鍼やお灸をすると、施術中にスーッと体がゆるみ眠くなる方も多いです。それだけ自律神経が整い副交感神経優位に傾く証拠と言えます。

実際、鍼灸が自律神経のうちリラックス側(副交感神経)の活動を高めることは研究でも示されています。ある系統的レビューでは、本物の鍼治療は偽の鍼に比べて有意に副交感神経活動を亢進させ、身体のリラックス度を高める効果が確認されました。また、鍼灸が自律神経失調に関わる様々な症状(片頭痛、うつ、不眠、過敏性腸症候群など)を改善するという報告もあります。例えば鍼灸後にストレスホルモンであるコルチゾール値が低下したり、心拍変動(HRV)が安定したりすることが観察されています。これらは、鍼灸が脳の自律神経中枢に働きかけ、交感神経の過剰な緊張を和らげていることを示唆します。

春バテで現れる症状(だるさ、頭痛、消化不良、イライラ等)は、自律神経の乱れによるものが多いため、鍼灸で根本から整えることで症状全体の底上げ改善が期待できます。定期的に施術を受けることで「よく眠れるようになり日中もシャキッと動ける」「気持ちが前向きになった」という声も多く、春を快適に過ごす助けとなるでしょう。

食中毒への鍼灸アプローチ

急性の食中毒はまず医療機関での対応が必要ですが、軽症の場合や回復期の消化器症状のケアにも鍼灸が役立ちます。鍼灸には胃腸の働きを調整し吐き気や腹痛を和らげる作用があるため、病院の治療と並行して取り入れることで症状緩和が期待できます。代表的なツボは、手首の内側にある内関(ないかん、PC6)です。内関は古来より嘔吐やむかつきに効くツボとして知られ、乗り物酔いやつわりのケアにも使われます。食中毒で吐き気が治まらない時に内関に鍼やお灸をすると、嘔吐中枢が鎮静されて吐き気が軽減します。また、お腹の中脘(ちゅうかん、CV12)は胃の機能を整える要穴で、胃痛や食欲不振の時に有効です。下痢が続く場合にはおへその両側にある天枢(てんすう、ST25)というツボを使い、腸の動きを正常化させます。足三里も胃腸全般の強化に使えるので、全身状態の立て直しに欠かせません。

近年の研究でも、鍼刺激(特に内関への刺激)は吐き気・嘔吐を抑える効果が統計的に確認されています。あるメタ分析では、手首の内関への鍼治療により術後の早期嘔吐発生率が有意に減少し、さらに鍼だけでなく指圧(内関への圧刺激)でも嘔吐や悪心の予防に効果があるとされています。これは迷走神経を介して胃腸の動きや嘔吐中枢に作用するためと考えられています。食中毒による吐き気・下痢でも、内関や天枢への刺激で症状が和らぎ、水分や食事の摂取がしやすくなることがあります。ただし重度の脱水や激痛を伴う場合は速やかな医療処置が優先です。鍼灸はあくまで補完的に、消化器の回復を助ける手段として活用します。慢性的な胃腸虚弱が背景にある方は、平時から足三里などで胃腸を強くしておくと食あたりしにくくなるでしょう。

3. セルフケア方法

春の不調を予防・改善するには、鍼灸院での施術に加えて日々のセルフケアも重要です。自宅で簡単にできるツボ押しやストレッチ、生活習慣の工夫についてご紹介します。どれも今日から実践しやすいものばかりです。

ツボ押しやストレッチでセルフケア
	•花粉症状に効くツボ押し:鼻がつまった時は、鼻の両脇にある迎香(げいこう)を指先で優しく押してみましょう。左右の小鼻のくぼみを人差し指で5秒ほど押し、離すのを繰り返すと鼻周辺の血行が良くなり通りが楽になります。目のかゆみには、目頭と眉頭の間にある睛明(せいめい)というツボや、こめかみの太陽(たいよう)を中指でゆっくり押すと多少和らぎます。また、くしゃみ・鼻水には手の合谷(ごうこく)を反対の親指でグッと痛気持ちいい程度に押してみましょう。合谷は「万能のツボ」とも呼ばれ、鼻や喉の症状からストレス緩和まで幅広い効果があります。花粉が多い日はこまめにツボ押しを取り入れてみてください。
	•ストレス緩和・春バテ対策に:自律神経の乱れには深呼吸とストレッチが有効です。仕事や勉強の合間に、ゆっくり鼻から息を吸って口から吐く深呼吸を数回行いましょう。呼吸に合わせて首をゆっくり回したり肩をすくめてストンと落とす運動をしたりすると、緊張でこわばった筋肉がほぐれてリラックスできます。特に肩こりや頭重感があるときは、首筋にある風池(ふうち)というツボを親指でぐっと押し揉むと効果的です。風池は後頭部の生え際にあり、押すとズーンと響く感じがあります。この刺激で血行が良くなり、頭にのぼった熱も鎮まります。また夜寝る前には、足裏の湧泉(ゆうせん)を強めに揉むと全身の力が抜けて眠りにつきやすくなります。湧泉は足の裏中央やや指寄りのくぼみで、不眠や疲労回復に昔から用いられるツボです。お風呂上がりにクリームなどでマッサージするのも良いでしょう。
	•胃腸を整えるセルフケア:春先は自律神経の影響で胃腸の働きも不安定になりがちです。おへその周りを「の」の字にさするお腹マッサージは、腸の動きを促進して便通を整える助けになります。下痢気味のときはおへその指三本分下にある関元(かんげん)をカイロや手のひらで温めると腹部がリラックスします。逆に食欲不振や胃もたれには、足三里のツボ押しをしてみましょう。膝のお皿の外側下、指4本分下がったすねの骨際にある足三里を親指でギューッと押すと胃がスッキリする感じがあります。ここは胃腸強化の定番ツボなので、日頃からお灸をすえるのもオススメです(お灸はドラッグストアで買える棒灸やシール灸を使えば自宅でも安全にできます)。嘔気があるときは手首内側の内関を押すと落ち着きます。リストバンド型の酔い止めグッズも内関を刺激する仕組みで作られているほど、効果が確かです。

食生活の改善と生活習慣のポイント
	•食生活の工夫:春先は環境の変化でつい食生活が乱れがちですが、バランスの良い食事が不調予防の基本です。ビタミンやミネラルを豊富に含む旬の野菜(菜の花、春キャベツ、アスパラガス等)や、良質なたんぱく質(魚、肉、大豆製品、卵)をしっかり摂りましょう。特にビタミンCやビタミンA、亜鉛などは免疫力維持に重要です。花粉症の方は腸内環境を整える発酵食品(ヨーグルト、味噌、漬物など)を摂ると症状緩和につながる可能性があります。また、東洋医学では春は肝の季節と言われ、解毒の季節でもあります。脂っこいものや甘いものの過食は控え、緑茶や柑橘類など抗酸化作用の高い食品を取り入れて体内の余分な炎症を抑えましょう。食中毒予防のためには調理や保存に注意するのはもちろん、十分な水分補給と胃腸に優しい食事(おかゆやスープなど消化の良いもの)を心がけて胃腸の負担を減らしてください。
	•生活習慣のポイント:基本的なことですが、規則正しい生活リズムが春の不調対策には欠かせません。自律神経を安定させるため、夜更かしを避けて十分な睡眠をとり、朝は太陽の光を浴びて体内時計をリセットしましょう。朝起きたらカーテンを開け、軽くストレッチや深呼吸をして体を目覚めさせると一日の自律神経の切り替えがスムーズになります。適度な運動も効果的です。天気の良い日はウォーキングやジョギングで汗をかけば、ストレス発散になり夜もよく眠れます(花粉や黄砂が多い日は無理せず室内運動に切り替えてください)。さらに、環境対策も大切です。花粉やPM2.5対策には外出時のマスク・メガネ着用や帰宅後のうがい・洗顔、洗濯物を外に干さないといった工夫をしましょう。部屋では空気清浄機を使ったり、こまめに掃除・換気を行ってアレルゲンや菌を溜め込まないようにします。ストレスを溜めない工夫も重要です。趣味の時間を作ったり、ぬるめのお風呂にゆっくり浸かってリラックスする習慣を持つと、自律神経の乱れが整いやすくなります。春は環境変化で頑張りすぎてしまう人も多いので、意識的に“休む時間”を確保してください。

これらのセルフケアはどれも簡単ですが、続けることで体質改善や症状予防に繋がります。ご自身の体調に合わせて取り入れてみてください。

4. まとめ

春に流行る花粉症、風邪・インフルエンザ、黄砂・PM2.5による不調、春バテ、食中毒といった症状について、その原因やメカニズム、そして鍼灸によるアプローチをご紹介しました。鍼灸治療は、これら春特有の不調に対して症状の緩和だけでなく根本からの体質改善を促すことが期待できます。科学的な研究でも鍼灸の有効性が示されつつあり、副作用が少なく自然治癒力を引き出す療法として注目されています。

春の不調を放っておくと、せっかくの過ごしやすい季節を十分に楽しめなかったり、夏まで疲れを引きずってしまったりしかねません。鍼灸を取り入れることで、薬だけに頼ることなく症状をコントロールし、体全体のバランスを整えることができます。また、鍼灸でケアしつつ本記事で紹介したセルフケア(ツボ押し、ストレッチ、生活習慣の見直し等)を実践すれば、不調の予防効果も高まります。鍼灸とセルフケアの相乗効果で、春に起こりがちな不調を上手に乗り越えましょう。

「未病を治す」(まだ病気になっていない段階でケアする)という考え方が東洋医学にはあります。春先に身体のメンテナンスをしておくことは、その後の季節を元気に過ごすための投資と言えます。つらい症状でお悩みの方は、ぜひ一度鍼灸治療を試してみてください。経験豊富な鍼灸師があなたの春の不調に寄り添い、改善へと導いてくれるはずです。鍼灸とセルフケアを味方につけて、快適で健やかな春の毎日を送りましょう。
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