【堺市堺区】更年期障害を徹底解説｜メカニズム・症状・治療（西洋医学）× 鍼灸・陰陽五行（東洋医学）
🏁 はじめに：更年期は「体と脳の設定が変わる時期」
更年期は閉経の前後数年（一般に45〜55歳ごろ）に起こる生理的なライフイベントです。女性ホルモン（主にエストロゲン）の急激な変動により、自律神経・体温調節・睡眠・感情・骨代謝など、全身の設定が同時多発的に揺さぶられます。これは「気の持ちよう」ではなく、生理学的根拠のある変化です。
ポイント：つらさの根っこは“原因が見えにくい複合トラブル”にあります。放置せず、仕組みを知って対処すれば改善の余地は大きいです。
🔎 目次
- メカニズム：なぜ起こる？
- 症状：よく知られる症状／実は見落とされやすい症状
- 診断・検査：受診の目安と除外したい病気
- 西洋医学の治療：HRTと非ホルモン療法、生活改善
- 東洋医学：陰陽五行・弁証と鍼灸・養生
- セルフケア：今日からできること10選
- ケーススタディ：40代後半・睡眠障害とホットフラッシュ
- よくある質問Q&A
- 堺市堺区で相談先を選ぶときのポイント
- まとめ
- 主要参考ガイドライン
メカニズム：なぜ起こる？
ホルモン低下が“司令塔”を揺らす
- 卵巣機能の変化によりエストロゲン分泌が低下。視床下部—下垂体—卵巣（HPO）軸のフィードバックが乱れ、体温調節の“快適ゾーン”が狭くなります。
- その結果、わずかな体温上昇でも「暑い！」と誤認し、ホットフラッシュ（のぼせ）・発汗が起こります。
- 脳内ではKNDyニューロン（キスペプチン／ニューロキニンB／ダイノルフィン）が関与し、血管運動症状（VMS）や睡眠・気分にも影響します。この経路を標的にしたNK3受容体拮抗薬（例：フェゾリネタント）は米国で承認され、VMS改善薬として位置づけられています。 (depts.washington.edu)
自律神経・神経伝達物質への波及
- 交感／副交感の切り替えが不安定になり、動悸・不眠・倦怠感・不安感などが出現。
- セロトニン・ノルアドレナリン系の変動が、気分・痛み・睡眠を揺らします。
- 骨代謝ではエストロゲン低下が骨吸収優位を招き、骨粗鬆症リスクの上昇につながります。
症状：よく知られる症状／実は見落とされやすい症状
一般的に知られている症状（代表例）
- ホットフラッシュ・寝汗
- 不眠（中途覚醒／早朝覚醒）
- イライラ・不安・抑うつ感
- 動悸、息切れ、疲労感
- 肩こり、頭痛、腰痛、冷え／のぼせの波
実は見落とされやすい症状（“隠れ更年期”のサイン）
- ブレインフォグ（集中力・記憶力の低下、言葉が出にくい）
- 口腔や粘膜の乾燥（ドライアイ、ドライマウス、膣の乾燥・性交痛）
- 関節痛・手指のこわばり（朝のつっぱり感）
- 耳鳴り・めまい、感覚過敏
- 皮膚のかゆみ・感覚異常（虫がはうような“皮膚そう痒”）
- 頻尿・尿漏れ（骨盤底筋の弱りと粘膜変化）
- 体重増加・体型変化（内臓脂肪優位、血糖・脂質変動）
- 口腔灼熱感・味覚の変化 など
症状は日内変動や波があります。「今日は平気→翌日はつらい」も更年期あるある。“調子の波”を記録すると対処が見つかりやすくなります。
診断・検査：受診の目安と除外したい病気
受診の目安
- 生活の質（QOL）が下がっている（睡眠・仕事・家事・育児に支障）
- ホットフラッシュが1日7回以上、または夜間に毎晩のように起きる
- 抑うつが疑われる／強い不安・焦燥が続く
- 不正出血、急な体重減少、強い胸痛・息切れなど危険サインがある
どんな検査？
- 問診（症状・周期・既往歴・家族歴）／身体診察
- 必要に応じて：血液検査（甲状腺、貧血、糖代謝、脂質、肝腎機能）、女性ホルモン（E2、FSH など）、骨密度（DXA）
- 除外したいもの：甲状腺機能異常、睡眠時無呼吸、心疾患、うつ病、不安障害 等
- 「更年期障害」は他疾患の見落としを避けたうえで総合的に捉えるのが基本です。 (nice.org.uk)
西洋医学の治療：HRTと非ホルモン療法、生活改善
1) HRT（ホルモン補充療法）
- 最も効果的な治療は、エストロゲン補充（子宮ありの場合は黄体ホルモン併用）です。血管運動症状（ホットフラッシュ・寝汗）に特によく効き、睡眠やQOLの改善、骨量減少の抑制が期待されます。 (nice.org.uk, jmwh.jp)
- 製剤：経口、経皮パッチ／ジェル、腟坐薬・クリーム（泌尿生殖器症状の改善に有用）。
- 適応の考え方：閉経前後〜閉経後10年以内、60歳未満で有益性がリスクを上回る場合が目安。 (depts.washington.edu)
リスクと注意点（代表例）
- 乳がん・血栓症リスクは年齢・開始時期・製剤・投与経路で変動。経皮エストロゲンは血栓リスクが低めとされる報告もあり、個別最適化が重要。
- 子宮体がんはエストロゲン単独で上昇するため、子宮ありは黄体ホルモン併用が原則。
- 禁忌：乳がん既往や活動性血栓症、原因不明の性器出血 等。
（詳細は日本女性医学学会の資料・医師の指示に従ってください。） (jmwh.jp, jmwh.jp)
**NICE（英国）では「HRTを第一選択として検討」**する方針が明確化されています。CBTはHRTが使えない、または併用が必要なケースで考慮。 (nice.org.uk, The Guardian)
2) 非ホルモン療法（薬物）
- SSRI/SNRI（例：パロキセチン、ベンラファキシン 等）…VMSの頻度・強度を有意に低下。
- ガバペンチン…夜間のほてり・睡眠に有効例。
- クロニジン…効果は限定的で副作用に注意。
- NK3受容体拮抗薬（フェゾリネタント）…KNDyニューロンを直接標的としVMSを改善。米国で承認済み。
- 局所療法（泌尿生殖器症状）…低用量腟エストロゲン、DHEA腟剤 など。
（使用可否・用量は必ず医師と相談） (The Menopause Society, depts.washington.edu)
3) 生活習慣：治療の“土台”
- 睡眠：就寝前ルーティン、就床・起床の固定、カフェイン・アルコールの調整、夜間の体温調節（寝具・室温）
- 運動：週150分の有酸素＋週2回のレジスタンスを目標。血管運動症状・気分・骨・代謝に総合的メリット。
- 栄養：地中海式寄りの食事、たんぱく質・鉄・カルシウム・ビタミンD、食物繊維。辛味・熱い飲料・アルコールはトリガーになる場合あり。
- 体重管理・禁煙：ホットフラッシュと代謝の双方で効果。
- ストレスケア：呼吸法／マインドフルネス／短時間の昼寝（20分まで）など
生活改善は単独で“完全解決”しないことも多いですが、薬物治療の効果を底上げし、副作用リスクも下げ得ます。
東洋医学：陰陽五行・弁証と鍼灸・養生
陰陽五行でみる更年期
- 腎（水）：成長・生殖・老化を司る。腎陰虚（ほてり・寝汗・口渇）／腎陽虚（冷え・むくみ・倦怠）
- 肝（木）：気血の巡り・情志の調整。肝鬱（イライラ・張り）
- 心（火）：精神・循環。心神不安（動悸・不眠）
- 脾（土）：消化吸収。脾虚（だるさ・浮腫・食欲不振）
- 肺（金）：呼吸・皮毛。乾燥や皮膚症状と関連
鍼灸（例）
- 代表経穴：三陰交・太谿・関元・陰陵泉・内関・神門・百会・太衝 など
- 狙い：腎を補い、肝の疏泄を促し、心脾のバランスを整えて自律神経と体温調節の安定を図る
- エビデンスの位置づけ：
- 鍼灸は無治療より有利とみえる研究もある一方、偽鍼との差は不明瞭とする系統的レビューがあり、確実性は限定的です（更新により結論は変わる可能性あり）。臨床では「合う方には有効」なことがあるため、補完療法として位置づけ、西洋医学的評価と併走するのが安全です。 (cochrane.org, PubMed)
養生（食・暮らし）
- 腎陰虚タイプ：黒ごま・黒豆・山芋・枸杞・蓮の実／辛味・刺激物は控えめ、夜更かしNG
- 腎陽虚タイプ：生姜・ねぎ・羊肉・えび・シナモン／冷飲・生もの過多を避け、温める
- 肝鬱タイプ：菊花・ミント・みかんの皮・香り野菜／深呼吸・散歩・ストレッチ
- 脾虚タイプ：雑穀・芋類・かぼちゃ・白身魚／冷たい甘味の摂りすぎ注意
注意：サプリ・生薬は相互作用や体質不適合があり得ます。必ず専門家へご相談を。
セルフケア：今日からできること10選
- ホットフラッシュ対策：重ね着・扇子や携帯ファン・クールタオル
- 睡眠衛生：就寝1時間前は“デジタル日没”／湯舟は就寝90分前
- トリガー日誌：発症時刻・食事・ストレス・室温をメモ
- 呼吸リセット：4-2-6呼吸×5セット（交感神経を鎮める）
- 水分＋ミネラル：汗をかく日は“水＋塩”も意識
- たんぱく質/鉄/ビタミンD：朝と昼に分散して摂取
- 筋トレ2種：スクワット＋ヒップヒンジ（骨・代謝・姿勢）
- 骨盤底筋ケア：ドローイン＋クラムシェル
- 日光＋散歩：体内時計の同調・気分改善
- “助けを求める力”：家族と上司に宣言して協力を得る
ケーススタディ：40代後半・睡眠障害とホットフラッシュ
お悩み：夜中に何度も目が覚める、日中ののぼせ、集中力低下
評価：問診で更年期スコア高値、甲状腺・貧血は除外、骨密度ベースライン測定
計画：
- 第一選択としてHRTを医師と相談（経皮製剤＋子宮保護） (nice.org.uk)
- 同時に睡眠衛生・運動・食事をセットで開始
- 鍼灸は補完療法として3〜4週に1回、冷え・のぼせの波をならす目的で実施（併走管理） (cochrane.org)
結果（3か月）：中途覚醒が週5→週1、日中のほてりが1/3に、仕事の集中も回復
よくある質問Q&A
Q1. どのくらい続きますか？
A. 個人差がありますが、多くは数年で軽快します。閉経後10年以内は変動が大きい時期。治療の中断・再開は医師と相談を。 (nice.org.uk)
Q2. HRTは太る？
A. 直接“脂肪を増やす”根拠は限定的です。むしろ睡眠改善・活動性向上により体重コントロールがしやすくなる方も。製剤選びと生活改善が鍵。 (jmwh.jp)
Q3. 乳がんが心配です。
A. 年齢・開始時期・投与法で相対リスクは変わります。子宮ありは黄体ホルモン併用がルール。家族歴や既往を含め個別評価を受けましょう。 (jmwh.jp)
Q4. 抗うつ薬でホットフラッシュは良くなりますか？
A. SSRI/SNRIに有効性があります。HRTが使えない／使いたくない方の選択肢として検討されます。 (The Menopause Society)
Q5. 鍼灸だけで治せますか？
A. 偽鍼との差が明確でない研究もあり、単独での十分性は不確実です。補完として、医療評価と併走するのが安全です。 (cochrane.org)
堺市堺区で相談先を選ぶときのポイント
- 婦人科での評価：出血異常や内分泌の除外、HRT可否の判断
- 内科での併存症管理：高血圧・脂質異常・糖代謝・甲状腺など
- 鍼灸・整体：睡眠・自律神経・体温調節の“波”をならす補完ケア（医療機関と情報共有しながら）
- カウンセリング：仕事・家庭の負荷調整、CBTの活用（HRTと併用も） (nice.org.uk)
選び方のヒント
- 多職種連携（医科と補完療法の橋渡し）
- 過度なまとめ買いを勧めない良心的な運営
- 再現性のあるセルフケア指導があること
まとめ
- 更年期障害はホルモン変動→脳・自律神経・体温調節の乱れが中核。**つらさは“本物”**です。
- HRTは第一選択として検討され、非ホルモン療法や生活改善と組み合わせて個別最適化する時代。 (nice.org.uk)
- 東洋医学（陰陽五行・鍼灸）は、補完として“波”をならし、睡眠・自律神経・筋骨格の不調にアプローチ可能。ただしエビデンス確実性には限界があるため、医療評価と併走が大前提。 (cochrane.org)
- 一人で抱え込まない—症状の記録→受診→併走ケア→生活整えの循環を作れば、QOLは着実に戻ってきます。
主要参考ガイドライン
- NICE: Menopause: identification and management (NG23) — 2024年改訂。HRTの位置づけや評価・併用療法の方針を明確化。 (nice.org.uk)
- 日本女性医学学会：ホルモン補充療法ガイドライン／一般向け冊子（HRTの適応・禁忌・製剤オプション）。 (jmwh.jp, jmwh.jp)
- NAMS（北米閉経学会）：2023 Nonhormone Therapy Position Statement（SSRI/SNRI、ガバペンチン、NK3拮抗薬などの位置づけ）。 (The Menopause Society, depts.washington.edu)
- Cochrane：Acupuncture for menopausal hot flushes（鍼灸のエビデンスは限定的）。 (cochrane.org)
- 厚労省 e-ヘルスネット：更年期関連解説。 (健康日本21)
